経営者の事業の将来を考える!『建設業許可の事業承継制度』についてお伝えします

現在、日本の建設業界では、経営者の年齢が高くなっていることが大きな課題となっており、
建設業を営む中小企業や個人事業の経営者の多くが60代〜70代で、
すでに引退を考える年齢に達している人も少なくありません。
しかし、後継者が決まっていなかったり、次の世代にスムーズに引き継げない企業が多く、
これが業界全体の大きな問題となっています。
建設業界の経営者の高齢化は、単なる「世代交代の問題」ではなく、
地域インフラや暮らしにも関わる重大な課題であることから、
事業承継をスムーズに行うための、承継制度の活用が推奨されています。
今回は建設業の事業承継! 『建設業許可の承継制度』について
せつめいしていきたいとおもいます。
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目次
- ○ 建設業許可の承継制度(建設業法第17条の2・3)とは
- ○ 建設業許可承継制度にはどんな種類があるのでしょうか?
- ・合併による承継
- ・事業譲渡による承継
- ・相続による承継(個人事業者の場合)
- ○ 建設業許可の承継制度のメリットって何でしょうか?
- ○ 建設業許可の承継制度の要件は何でしょうか?
- ・承継人が新規申請と同じ要件を満たしていることが必要です
- ・被承継人の建設業の全部を承継することが必要です
- ・被承継人と承継人が同一業種について異なる区分の許可を受けていないことが必要です
- ○ 認可の有効期間はどのようになるのでしょうか?
- ○ 認可申請の申請方法を確認してみましょう!
- ・提出先はどこでしょうか?
- ・提出部数は何部でしょうか?
- ・申請書類・確認書類はどんなものがありますか?
- ○ 認可申請についてはどんなことに注意点すればよいのでしょうか?
- ・申請期限について注意することは何でしょうか?
- ・事業の承継が適正に行われることに気を配っていきましょう!
- ・既存の契約や取引先との調整に気を配っていきましょう!
- ○ 建設業許可事業譲渡(法人成り)のフローをまとめてみました
- ○ まとめ
- ○ 青山健司行政書士事務所では、経営事項審査を受審したい方をサポートいたします!
建設業許可の承継制度(建設業法第17条の2・3)とは
建設業許可の承継制度とは、
建設業を営む企業が合併や事業譲渡などによって組織変更を行う際に、
従来の建設業許可を引き継ぐことができる制度のことです。
通常、建設業許可は法人や個人に紐づいているため、
会社の合併や事業承継があった場合、新たに許可を取り直す必要があります。
しかし、この承継制度を利用すれば、
一定の要件を満たすことで新たな許可の取り直しをせずに、
事業を継続することが可能になります。
建設業許可承継制度にはどんな種類があるのでしょうか?
建設業許可の承継制度には、
・合併による承継
・事業譲渡による承継
・相続による承継(個人事業者の場合)
の3つのパターンがあります。
それぞれを確認していきましょう!
合併による承継
企業が合併(吸収合併・新設合併)する場合、
存続会社または新設会社が被合併会社の建設業許可を承継できます。
主な要件としては、
・被合併会社の建設業許可を承継する会社が、建設業法の要件を満たしていること
・合併後、事業を適切に継続できる体制が整っていること
・承継後、変更届など必要な手続きを行うこと
が挙げられます。
事業譲渡による承継
会社の事業の全部または建設業に関わる事業を譲渡した場合、
譲受会社が建設業許可を引き継ぐことができます。
主な要件としては、
・譲渡元と譲受先の間で事業譲渡契約が締結されていること
・譲受会社が建設業許可の要件を満たしていること
・許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)へ承継申請を行い、承認を受けること
が挙げられます。
なお、個人事業主が法人成りするケースも
この事業譲渡による承継に該当します。
相続による承継(個人事業者の場合)
個人事業主が死亡した場合、
その相続人が建設業許可を承継できる場合があります。
主な要件としては、
・相続人が建設業の許可要件(経営業務の管理責任者・専任技術者など)を満たしていること
・適切な事業運営が可能な体制を整えていること
・相続開始後、一定期間内に承継の手続きを行うこと(通常は30日以内)
が挙げられます。
建設業許可の承継制度のメリットって何でしょうか?
承継制度のメリットは、
①新規許可申請の手間が省ける
→ 通常、新たに許可を取得するには時間と手間がかかるが、
承継によりスムーズに事業を継続できる。
②経営の安定性が保たれる
→ 許可が切れずに事業を継続できるため、
取引先や金融機関の信頼を維持しやすい。
③事業のスムーズな移行が可能
→ 既存の工事契約や取引をそのまま引き継ぐことができる。
といった点が挙げられます。
建設業許可の承継制度の要件は何でしょうか?
建設業許可の承継制度は認可申請に該当し、
申請区分は
・譲渡及び譲受け(個人事業主の法人成りも含む)
・合併(法人に限る)
・分割(法人に限る)
・相続
となります。
これらの認可要件をそれぞれ見てみましょう。
承継人が新規申請と同じ要件を満たしていることが必要です
建設業の許可を受けるためには、承継人が
以下の6つの『許可要件』を満たす必要があります。
【許可要件】
①経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること
②適切な社会保険に加入(届出)していること
③営業所ごとに「専任」で営業技術者を配置していること
④請負契約に関して誠実性である者であること
⑤請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
⑥欠格要件に該当しないこと
被承継人の建設業の全部を承継することが必要です
地位を承継する場合には、
被承継人の許可業種すべてを承継人が承継する必要があります。
一部業種の地位を承継することはできませんので注意が必要です。
被承継人と承継人が同一業種について異なる区分の許可を受けていないことが必要です
被承継人と承継人の間で許可業種について判と区の区分に相違がある場合には、
認可申請前に不要な区分の許可を廃業しなければ承継できません。
認可の有効期間はどのようになるのでしょうか?
認可後の許可の有効期間は、
承継の日における残存の許可の有効期限にかかわらず、
譲渡、合併および分割については、当該承継の日の翌日から、
相続については認可の翌日から、起算して5年間です。
また、相続人(承継先)が、認可申請をしたときは、
被相続人(承継元)の死亡の日からその認可を受ける日、
または認可をしない旨の通知を受ける日までは、
被相続人に対してした建設業許可は業許可は、
その相続人(承継先)に対してしたものとみなされます。
認可申請の申請方法を確認してみましょう!
認可申請の申請方法を北海道を例にとって
まとめてみましたので確認していきましょう。
提出先はどこでしょうか?
建設業許可と同様に、主たる営業所のある市町村を
管轄する振興局建設指導課になります。
申請の手順については細かい規制があるため、
申請の前に事前相談をおススメいたします。
提出部数は何部でしょうか?
提出部数については建設業許可と同様に、
正本一部・副本2部(石狩振興局においては正本・副本各1部)になります。
副本は受付印を押印ご返却されます。
申請書類・確認書類はどんなものがありますか?
申請書類・添付書類については以下のリンク先
を参照して確認していただければ幸いです。
建設業許可申請書(建設業許可認可申請書) 出典:北海道HPより
認可申請についてはどんなことに注意点すればよいのでしょうか?
建設業許可承継制度の認可申請において、
申請者が注意すべきポイントを確認していきましょう!
手続きの不備があると承認が下りず、
事業の継続に支障をきたす可能性があります。
慎重に準備を進めていくことを心がけていきましょう!
申請期限について注意することは何でしょうか?
承継手続きには申請期限が設けられており、
・合併・事業譲渡の場合:手続き後 30日以内 に申請する
・相続の場合:相続開始(被相続人の死亡)から 30日以内 に申請する
必要があります。
期限を過ぎると、承継ではなく新規許可の取得が必要になり、
手続きが大幅に複雑化しますので注意が必要です。
事業の承継が適正に行われることに気を配っていきましょう!
事業の承継手順や承継日、
法人成りの場合の社会保険の加入日
など慎重に進めましょう!
特に社会保険の加入は常勤確認にも
関連してくるので注意が必要です。
既存の契約や取引先との調整に気を配っていきましょう!
承継が認められるまでの間、
工事の受注や施工が制限されることがあるので注意が必要です。
主要な取引先や発注者に事前に説明と合意を得ることが重要になります。
取引先からの信用を維持していくためにも、
承継後の新体制を明確に説明できるように準備する必要があります。
建設業許可事業譲渡(法人成り)のフローをまとめてみました
建設業許可事業譲渡の中でも、多く見られる『法人成り』のケースを例に
フロー図をまとめてみました。
建設業許可を持った個人事業主が法人成りで建設業許可事業譲渡を利用した場合、
メリットとして
①建設業の許可番号を法人成りした新企業でも継続して使用できる
②建設業許可申請手数料(9万円)がかからないので、コストが抑えられる
といった点があります。
前項でも述べたように、申請のタイミング・手続きが煩雑なため、
充分な注意が必要になってきます。
まとめ
建設業界の将来を守るためには、
経営の承継と建設業許可の引き継ぎをスムーズに行える環境づくりが不可欠です。
現在の課題である『経営者の高齢化と後継者不足』、『許可の引き継ぎがスムーズにいかない』
といった点を改善するために、『制度の柔軟化と簡素化』、『第三者承継やM&Aの活用』、
『デジタル化の推進』を推し進めていく必要に駆られています。
制度の見直しと中小企業への支援強化が、今後の大きなカギとなっていきそうですね。
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PROFILE

- 青山健司行政書士事務所 代表
-
事務所名:青山健司行政書士事務所
住所 :〒062-0932 北海道札幌市豊平区平岸2条11丁目3番14号 第一川崎ビル1階
TEL:011-815-5282
許可番号:行政書士登録番号15010797号
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